保育学

保育学とは?

保育学は、乳幼児の成長や発達、生活、遊び、教育、家庭支援などについて研究する学問です。
子どもは、生まれてから日々さまざまな経験を重ねながら、身体や心、言葉、人との関わり方などを発達させていきます。その成長には、家庭や保育園、認定こども園、地域社会などの環境が深く関係しています。
保育学では、子どもの発達の特徴を理解するとともに、一人ひとりが安心して生活し、自分らしく成長できる保育のあり方を考えます。
たとえば、次のような疑問を研究します。

  • 子どもは遊びを通して何を学んでいるの?
  • 赤ちゃんは、どのように人との信頼関係を築いていくの?
  • 子どもの言葉や社会性は、どのように発達するの?
  • 子どもが安心して過ごせる保育環境とは、どのようなものなの?
  • 子どもの興味や個性を尊重する保育には、どのような工夫が必要なの?
  • 保護者と保育者は、どのように協力して子どもの成長を支えられるの?
  • 発達の特性や家庭環境が異なる子どもたちを、どのように支援できるの?

    保育学の特徴は、子どもの生活そのものを学びや成長の場として考えることです。
    たとえば、積み木で遊ぶことは、単なる遊びではありません。形や大きさを考える力、指先を使う力、友達と協力する力など、さまざまな発達と関係しています。
    また、食事や着替え、睡眠、片づけといった日常生活も、子どもが自分でできることを増やし、生活する力を身につける大切な機会です。
    保育学は、子どもを一方的に教えたり管理したりする方法を考える学問ではありません。子どもの気持ちや主体性を尊重しながら、成長を支える環境や関わり方を科学的に探究する学問なのです。

保育学では何を研究する?

保育学では、乳幼児の発達や生活、遊び、保育環境、家庭支援など、さまざまなテーマを研究します。
主な研究内容には、次のようなものがあります。

  • 乳幼児の発達
    身体、運動、認知、言語、感情、社会性などがどのように発達するのかを研究します。
  • 遊びと学び
    ごっこ遊び、積み木、砂遊び、運動遊びなどが、子どもの発達や学習にどのように関係するのかを研究します。
  • 保育者と子どもの関係
    保育者の言葉かけや関わり方が、子どもの安心感や主体性にどのように関係するのかを研究します。
  • 保育環境
    保育室の広さ、遊具の配置、屋外環境などが、子どもの活動や生活に与える影響を研究します。
  • 乳児保育
    乳児期の生活や発達、愛着形成、養護と教育のあり方などを研究します。
  • 幼児教育
    幼児期の遊びや生活を通した学び、就学前教育のあり方などを研究します。
  • 言語発達とコミュニケーション
    子どもの言葉の獲得や、保育者・友達とのコミュニケーションについて研究します。
  • 子どもの健康と安全
    食事、睡眠、衛生、事故予防、感染症対策などを研究します。
  • 特別な支援を必要とする子どもの保育
    障害や発達の特性などに応じた保育方法や、誰もが参加しやすい環境について研究します。
  • 保護者支援
    子育ての悩みや育児負担、家庭と保育施設の連携などを研究します。
  • 保育制度と政策
    保育施設の仕組み、保育の質、待機児童、保育者の働く環境などを研究します。
  • 子どもの権利
    子どもの意見や気持ちを尊重し、安心して生活できる保育のあり方を研究します。

    保育学では、子どもの行動を観察したり、保育者や保護者への調査を行ったり、保育実践を分析したりします。
    子どもにとってよりよい保育とは何かを、発達や生活の実態に基づいて考えることが重要です。

保育学にはどんな分野がある?

保育学は、子どもの発達や生活を多面的に理解するため、さまざまな専門分野に分かれています。

乳児保育学

0歳からおおむね3歳未満の子どもの発達や生活、保育方法について研究します。

幼児教育学

幼児期の遊びや生活を通した学び、教育方法、教育環境などを研究します。

保育内容学

健康、人間関係、環境、言葉、表現などの領域を通して、子どもの成長を支える保育の内容や方法を研究します。

発達心理学

子どもの認知、感情、言語、社会性などの発達について研究します。

保育環境学

保育室や園庭、遊具、人的環境などが子どもの生活や活動に与える影響を研究します。

子どもの健康・保健

乳幼児の健康管理、栄養、衛生、病気の予防、事故防止などを研究します。

障害児保育・インクルーシブ保育

障害や発達の特性などが異なる子どもたちが、ともに生活し学べる保育のあり方を研究します。

子育て支援学

保護者への相談支援や、家庭・地域と保育施設の連携について研究します。

児童文化学

絵本、紙芝居、おもちゃ、童話、遊びなど、子どもを取り巻く文化について研究します。

保育制度・保育政策

保育制度、施設運営、保育の質、保育者の専門性などを研究します。

保育者養成・保育者教育

保育者が専門的な知識や技術を身につけ、成長していくための教育方法を研究します。

保育史・保育思想

保育の歴史や、保育・幼児教育に関する思想、制度の変化などを研究します。

これらの分野は互いに関係しており、大学によって名称や専門領域の分け方が異なります。
保育学では、子どもの発達、保育の実践、家庭や社会との関係を総合的に学ぶことが大切です。

大学では保育学をどのように学ぶ?

大学では、子どもの発達や保育の基礎を学び、保育の専門知識や実践力を身につけていきます。

1年次|保育と子どもの発達の基礎を学ぶ

保育学概論、教育学、発達心理学、児童福祉、子どもの健康などを学びます。
子どもの成長の特徴や、保育が社会で果たす役割について理解を深めます。

2年次|保育の専門分野を学ぶ

乳児保育、保育内容、子どもの言葉や表現、保育環境、子育て支援などを学びます。
また、絵本の読み聞かせ、音楽、造形、運動遊びなどの演習を通して、保育の実践的な方法を学びます。

3年次|実習や専門研究に取り組む

保育士資格や幼稚園教諭免許状などの取得を目指す課程では、所定の実習を通して保育現場で学びます。
子どもの行動を観察し、保育者の関わり方や保育環境について考えます。
また、ゼミで関心のある研究テーマについて学びを深めます。

4年次|卒業研究と専門性の向上

自分で研究テーマを設定し、卒業論文や卒業研究などに取り組みます。
研究テーマには、次のようなものがあります。

  • 絵本の読み聞かせは、子どもの言葉の発達にどのように関係するのか?
  • 保育者の言葉かけは、子どもの主体的な活動にどのような影響を与えるのか?
  • 園庭の環境によって、子どもの遊び方はどのように変わるのか?
  • 子ども同士のトラブルを、保育者はどのように支援すればよいのか?
  • 保護者が安心して子育てできるためには、どのような支援が必要なのか?

    保育学では、子どもの発達を学ぶ → 保育の方法を考える → 演習や実習で体験する → 実践を振り返る → よりよい保育を研究するという流れで学びを深めます。
    なお、大学や短期大学、専門学校などによって、修業年限やカリキュラム、取得を目指せる資格・免許は異なります。

保育学ではどんな授業・実習をする?

保育学では、子どもの発達や教育に関する講義に加えて、音楽、造形、運動、保育実習など、実践的な授業が多く行われます。

保育学概論

保育の目的や役割、歴史、制度、保育者の専門性などを学びます。

発達心理学

乳幼児の認知、感情、言語、運動、社会性などの発達について学びます。

乳児保育

乳児期の生活や発達、保育者との関係、食事や睡眠などの支援について学びます。

保育内容演習

健康、人間関係、環境、言葉、表現などの領域について、子どもの遊びや生活と関連づけて学びます。

音楽表現

歌、リズム遊び、楽器演奏などを通して、子どもの音楽表現を支える方法を学びます。

造形表現

絵画、工作、粘土、身近な素材を使った制作などを通して、子どもの創造的な表現について学びます。

身体表現・運動遊び

運動遊びやリズム運動などを通して、子どもの身体の発達や活動を支える方法を学びます。

絵本・児童文化

絵本、紙芝居、おもちゃ、童話などについて学び、子どもの興味や発達との関係を考えます。

子どもの健康と安全

感染症対策、衛生管理、事故予防、応急対応などについて学びます。

障害児保育

障害や発達の特性などに応じた保育方法や、参加しやすい環境づくりについて学びます。

保育指導案の作成

子どもの姿や興味を踏まえて、遊びや活動のねらい、環境構成、保育者の援助などを考えます。

保育実習

保育所などで、子どもの生活や遊び、保育者の役割について実践的に学びます。

施設実習

所定の課程では、児童福祉施設などで子どもの生活や支援について学びます。

教育実習

幼稚園教諭免許状を目指す課程では、幼稚園で教育活動を体験します。

ゼミ・卒業研究

関心のあるテーマについて、文献調査や観察、実践の分析などを行います。

保育学では、知識を身につけるだけでなく、子どもの姿を理解し、その場に応じて関わり方を考える力が求められます。

保育学ではどんな研究が行われている?

保育学では、子どもの成長や生活、保育者の関わり方、保育制度などに関する研究が行われています。

遊びと発達の研究

積み木や砂遊び、ごっこ遊びなどが、子どもの認知や社会性の発達とどのように関係するのかを研究します。

乳児と保育者の関係の研究

乳児と保育者のやり取りや信頼関係が、子どもの安心感や発達にどのように関係するのかを研究します。

言語発達と保育の研究

保育者との会話や絵本の読み聞かせ、友達との交流などが、言語発達にどのように関係するのかを研究します。

保育環境の研究

保育室や園庭、遊具の配置などが、子どもの遊びや行動に与える影響を研究します。

子どもの主体性の研究

子どもが自分で遊びを選び、考え、行動するためには、どのような保育が必要なのかを研究します。

友達関係の研究

子ども同士の協力や対立、仲間関係の形成などを研究します。

インクルーシブ保育の研究

障害や発達の特性などが異なる子どもたちが、ともに生活し学ぶための環境や支援方法を研究します。

子どもの健康と生活習慣の研究

睡眠、食事、運動、生活リズムなどと、子どもの健康や発達との関係を研究します。

保護者支援の研究

育児負担や子育ての悩み、家庭と保育施設の連携などについて研究します。

保育者の専門性の研究

保育者が子どもの行動をどのように理解し、実践を改善していくのかを研究します。

保育の質の研究

保育環境、保育者の配置、子どもとの関わりなどから、保育の質を高める方法を研究します。

自然体験と保育の研究

自然遊びや屋外活動が、子どもの興味や探究心、身体活動などにどのように関係するのかを研究します。

デジタル技術と保育の研究

デジタル教材やICTを、子どもの発達や保育の目的に合わせてどのように活用できるのかを研究します。

多文化共生と保育の研究

異なる文化や言語的背景を持つ子どもたちが、安心して生活できる保育について研究します。

保育学の研究では、子どもの行動や発言だけでなく、保育者の関わり方や環境、家庭・地域との関係なども分析します。
子どもの気持ちや発達の違いを尊重しながら、よりよい保育の方法を考えることが重要です。

保育学とつながる学問

保育学は、子どもの成長や生活を総合的に理解するため、多くの学問と関係しています。

児童学

子どもの発達や生活、家庭、社会環境などを幅広く理解する際に関係します。

教育学

子どもの学習や教育方法、教育制度などを研究する際に関係します。

心理学

子どもの認知、感情、行動、人間関係などを理解する際に関係します。

特別支援教育学

障害や発達の特性などに応じた教育や支援を考える際に関係します。

社会福祉学

児童福祉や子育て支援、家庭への援助などを考える際に関係します。

医学

子どもの身体の発達や健康、病気などを理解する際に関係します。

看護学

子どもの健康管理や、病気のある子どもと家族への支援などで関係します。

言語学

子どもの言葉の獲得やコミュニケーションの発達を研究する際に関係します。

リハビリテーション学

子どもの運動や認知、言語などの発達と、日常生活への支援を考える際に関係します。

栄養学

子どもの成長に必要な栄養や食生活、食育などを研究する際に関係します。

社会学

家庭や地域社会、保育制度、子育て環境などを研究する際に関係します。

芸術・デザイン学

造形表現や遊具、保育空間など、子どもの表現活動や環境づくりを考える際に関係します。
たとえば、

  • 遊びと学び = 保育学 × 児童学 × 心理学
  • 言葉の発達 = 保育学 × 言語学 × 発達心理学
  • 子どもの健康 = 保育学 × 医学 × 栄養学
  • インクルーシブ保育 = 保育学 × 特別支援教育学 × 社会福祉学
  • 保育環境づくり = 保育学 × 心理学 × デザイン学
  • 子育て支援 = 保育学 × 社会福祉学 × 社会学

    というように、複数の学問を組み合わせることで、子どもの成長や生活をより深く理解できます。

保育学をちょっと体験してみよう

保育学の考え方は、身近な遊びや生活の中から体験できます。

テーマ:積み木遊びにはどんな学びがある?

積み木は、子どもにとって身近なおもちゃの一つです。
しかし、積み木遊びには、さまざまな発達や学びにつながる経験が含まれています。
たとえば、次のようなことを考えてみましょう。

  • 積み木を高く積むためには、どのような工夫が必要だろう?
  • 大きさや形の違う積み木を組み合わせるとき、どのようなことを考えているだろう?
  • 積み木が倒れたとき、子どもはどのような反応をするだろう?
  • 友達と一緒に積み木で遊ぶとき、どのようなやり取りが生まれるだろう?
  • 年齢や発達の違いによって、積み木の遊び方はどのように変わるだろう?
  • 保育者は、どのような声かけや環境づくりができるだろう?

    積み木遊びでは、手指の操作、空間の理解、試行錯誤、想像力、コミュニケーションなど、さまざまな力が関係しています。
    ただし、すべての子どもが同じ遊び方をするわけではありません。
    積み木を並べることを楽しむ子ども、積み上げることを楽しむ子ども、建物をつくる子どもなど、それぞれの興味や発達によって遊び方は異なります。
    保育学では、子どもの遊びを決められた方法に当てはめるのではなく、子どもが何に興味を持ち、どのような経験をしているのかを考えます。
    また、保育者がすぐに答えを教えるのではなく、子ども自身が考えたり試したりできる環境を整えることも大切です。
    遊びの中にある学びを発見し、子どもの主体性を尊重することが、保育学の第一歩です。

保育学からつながる職業

保育学で学ぶ子どもの発達、教育、生活、保育環境、家庭支援などの知識は、さまざまな職業につながります。

保育士

保育所や児童福祉施設などで、子どもの生活や成長を支える専門職です。保育士資格が必要です。

幼稚園教諭

幼稚園で、遊びや生活を通して幼児の学びや成長を支える仕事です。教員免許状が必要です。

保育教諭

幼保連携型認定こども園で、教育と保育を一体的に行う仕事です。原則として保育士資格と幼稚園教諭免許状の両方が必要です。

児童指導員

児童福祉施設などで、子どもの生活や発達を支援します。任用には所定の要件があります。

児童発達支援に関わる職員

児童発達支援センターや児童発達支援事業所などで、子どもの発達や生活を支援します。職種によって必要な資格や要件が異なります。

子育て支援施設職員

地域の子育て支援センターなどで、親子の交流や相談、子育て支援活動に携わります。

放課後児童支援員

放課後児童クラブなどで、小学生の放課後の生活や遊びを支えます。所定の要件や研修があります。

児童福祉司

児童相談所などで、子どもや家庭に関する相談援助を行います。任用には所定の要件があります。

地方公務員(保育・子育て支援)

自治体の保育所や子育て支援、児童福祉などに関する業務に携わります。

おもちゃ・教材開発職

子どもの発達や興味を踏まえ、おもちゃや教材などの企画・開発に携わります。

児童書編集者

絵本や児童書、子ども向けの学習教材などの企画・編集に携わります。

子ども向け施設・サービス企画職

子ども向けの遊び場、教育サービス、体験施設などの企画に携わります。

保育学研究者・大学教員

大学や研究機関で、保育の方法や環境、乳幼児の発達、保育制度などについて研究します。

保育学を学ぶことで、子どもと直接関わる仕事だけでなく、保育環境や子育て支援制度、子ども向けの商品・サービスをつくる仕事にもつながります。
ただし、保育学を専攻するだけで、すべての資格や免許が取得できるわけではありません。進学先を選ぶ際には、取得できる資格や免許、実習の内容を確認することが大切です。

もっと保育学を知りたい人へ

保育学に興味を持ったら、まずは子どもの遊びや生活の中にある小さな疑問を見つけてみましょう。
たとえば、赤ちゃんが人の顔を見て笑う理由、子どもが同じ遊びを繰り返す理由、友達との関わり方が変化する過程など、日常生活の中には研究テーマがたくさんあります。
また、保育園や幼稚園、認定こども園などが、どのような役割を持っているのか調べてみることもおすすめです。
保育施設では、子どもの生活を支えるだけでなく、遊びや人との関わりを通して、さまざまな学びや成長を支えています。
こども家庭庁や文部科学省などが公開している資料からは、保育制度や幼児教育、子育て支援について学ぶことができます。
保育学を学ぶときには、次のような視点を持つとよいでしょう。

  • 子どもは、遊びを通して何を学んでいるのだろう?
  • 子どもの発達や興味の違いを、どのように尊重できるだろう?
  • 子どもが安心して過ごせる保育環境とは、どのようなものだろう?
  • 保育者は、子どもの主体性をどのように支えられるだろう?
  • 保護者と保育者は、どのように協力できるだろう?
  • すべての子どもが参加しやすい保育には、どのような工夫が必要だろう?
  • 子どもの権利や気持ちを、どのように大切にできるだろう?

    保育学では、子どもの行動を大人の基準だけで評価するのではなく、その子どもが何を感じ、何を経験しているのかを理解しようとします。
    また、子どもの発達には個人差があり、同じ年齢でも興味や得意なこと、成長のペースは異なります。
    保育学の魅力は、子どもの遊びや生活に隠された学びを科学的に探究し、一人ひとりの成長を支える環境を考えられることです。
    子どもが安心して遊び、学び、自分らしく成長できる社会をつくるために、保育学の世界を探究してみてください。