電気電子工学

電気電子工学とは?

電気電子工学は、電気や電子の性質を利用して、エネルギー・通信・コンピュータ・電子機器などの技術を研究する学問です。
私たちの生活には、電気電子工学から生まれた技術が数多く使われています。

たとえば、

「発電した電気は、どうやって家庭まで届くの?」
「スマートフォンは、どうやって情報を送っているの?」
「半導体は、どうやって計算や情報処理をしているの?」
「モーターは、なぜ電気で回転するの?」
「太陽光から、どうやって電気をつくるの?」
「センサーは、どうやって周囲の変化を検知するの?」

といった疑問が、電気電子工学につながっています。
電気電子工学では、大きく分けると、電気を**「つくる・送る・動力として使う」技術と、電子を「情報を処理する・伝える・制御する」**技術について学びます。
そのため、電力・エネルギー、電気回路、電子回路、半導体、通信、電磁波、制御、センサーなど、非常に幅広い分野があります。
たとえば発電所でつくられた電気を家庭や工場へ安定して届ける技術には、電力工学が使われています。一方、スマートフォンやコンピュータの内部では、半導体や電子回路の技術が活躍しています。
さらに現在では、電気自動車、再生可能エネルギー、ロボット、IoT、AI、次世代通信などにも電気電子工学が欠かせません。
つまり電気電子工学とは、電気と電子の力を利用して、エネルギーと情報の両面から現代社会を支え、新しい技術を生み出していく学問なのです。

電気電子工学では何を研究する?

電気電子工学では、電気をつくる・送る・利用する技術から、半導体、通信、電子機器まで幅広く研究します。
主な研究内容には、次のようなものがあります。

  • 発電・電力システムの研究
    発電した電気を、安全かつ安定して家庭や工場へ届けるための仕組みを研究します。停電を防ぐ技術や電力を効率よく利用する方法なども研究対象です。
  • 再生可能エネルギーの研究
    太陽光発電や風力発電などを効率よく利用する技術を研究します。蓄電池や電力網と組み合わせたエネルギーシステムについても研究します。
  • モーター・電動機の研究
    電気エネルギーを運動へ変換するモーターについて研究します。電気自動車、鉄道、ロボット、産業機械などにつながる技術です。
  • 半導体の研究
    コンピュータやスマートフォンなどに使われる半導体の仕組みや、新しい半導体材料・デバイスについて研究します。
  • 電子回路の研究
    電子機器の内部で情報を処理する回路について研究します。より小さく、高速で、省電力な電子回路の開発も重要なテーマです。
  • 通信技術の研究
    電波や光などを使って、音声・画像・データを高速に送る方法を研究します。携帯電話、無線通信、光通信などに関係します。
  • 電波・電磁波の研究
    電波がどのように発生し、空間を伝わるのかを研究します。アンテナ、レーダー、衛星通信などにもつながります。
  • センサーの研究
    温度、光、圧力、動きなどを電気信号として検出する技術を研究します。自動車、スマートフォン、医療機器、ロボットなど幅広い機器に利用されています。
  • 制御技術の研究
    機械やシステムを目的どおりに自動で動かす方法を研究します。ロボット、自動運転、ドローン、工場設備などに応用されています。
  • 光・レーザー技術の研究
    光を発生・検出・制御する技術を研究します。光通信、ディスプレイ、センサー、医療機器などにつながります。
  • 新しい電子デバイスの研究
    より高速で省エネルギーなコンピュータや電子機器を実現するため、新しい材料や電子デバイスについて研究します。

このように電気電子工学では、巨大な発電設備から、肉眼では見えないほど小さな半導体まで、非常に幅広いものを研究します。
そして、「エネルギーをどう扱うか」と「情報をどう扱うか」という二つの大きなテーマから、社会を支える新しい技術を生み出していくことが、電気電子工学研究の特徴です。

電気電子工学にはどんな分野がある?

電気電子工学には、発電や送電などの大規模なエネルギーシステムから、半導体や電子回路、通信、制御まで、さまざまな専門分野があります。

電力工学

発電所でつくられた電気を、家庭や工場などへ安全かつ安定して届けるための技術を研究します。発電、送電、変電、配電などを扱います。

エネルギー工学

太陽光や風力などの再生可能エネルギー、蓄電池、省エネルギー技術などを研究します。次世代のエネルギーシステムを考える分野です。

電気機器・モーター工学

モーターや発電機など、電気と運動を変換する機器について研究します。電気自動車、鉄道、ロボット、産業機械などに利用されています。

電子回路工学

トランジスタなどの電子部品を組み合わせ、信号を増幅・処理・制御する回路について研究します。さまざまな電子機器の基礎となる分野です。

半導体工学

半導体の性質や、トランジスタ、集積回路などについて研究します。コンピュータやスマートフォンをはじめ、現代の電子機器を支える重要な分野です。

通信工学

音声、画像、動画、データなどの情報を遠くまで正確に伝える技術を研究します。無線通信、光通信、携帯電話ネットワークなどにつながります。

電磁波・アンテナ工学

電波や電磁波の性質と、それを送受信するアンテナについて研究します。スマートフォン、衛星通信、レーダーなどにも利用されています。

制御工学

機械やシステムを目的どおりに動かす方法を研究します。ロボット、自動運転、ドローン、工場の自動化などと深く関係しています。

計測・センサー工学

温度、光、圧力、加速度などの物理量を測定し、電気信号として取り出す技術について研究します。医療機器や自動車、IoT機器などにも使われています。

光・フォトニクス

レーザーや光ファイバーなど、光の性質を利用した技術を研究します。高速通信、センサー、ディスプレイ、医療技術などにつながっています。

集積回路・LSI

非常に多くのトランジスタを小さなチップの中に組み込み、高度な情報処理を行う回路を研究・設計します。コンピュータやAIを支える重要な技術です。

これらの分野は独立しているわけではありません。
たとえば電気自動車では、電力・エネルギー × モーター × 半導体 × 電子回路 × 制御 × センサーといった複数の分野が組み合わされています。
電気電子工学は、「電気」「電子」「情報」「エネルギー」を横断しながら、現代社会を支える技術を研究する非常に幅広い工学分野です。

大学では電気電子工学をどのように学ぶ?

大学の電気電子工学では、まず数学・物理学と電気回路の基礎を身につけ、そこから半導体、通信、電力、制御などの専門分野へ進んでいきます。

1年次|数学・物理と工学の基礎を学ぶ

電気電子工学を理解するための土台として、微分積分・線形代数・物理学・電磁気学の基礎・プログラミングなどを学びます。高校で学んだ数学や物理が、実際の工学技術にどのようにつながっているのかを理解していきます。

2年次|電気電子工学の基本を学ぶ

電気電子工学の中心となる、電気回路・電子回路・電磁気学・半導体・デジタル回路などを本格的に学びます。実験も増え、実際に回路を組んで電圧や電流を測定したり、電子部品の働きを確かめたりします。

3年次|専門分野を深める

自分の興味に応じて、より専門的な分野を学びます。たとえば、電力・エネルギー、半導体・電子デバイス、通信・電波、制御・ロボット、光・フォトニクス、センサー・計測などがあります。プログラミングやシミュレーションを使って、回路やシステムの動きを解析することもあります。

4年次|卒業研究に取り組む

研究室に所属し、自分の専門テーマについて研究します。たとえば、「より少ない電力で動く半導体をつくれないか?」「再生可能エネルギーを安定して利用するには?」「電気自動車のモーターをもっと高性能にできないか?」「より高速な無線通信を実現するには?」「ロボットをより正確に制御するには?」といったテーマがあります。
研究では、回路や装置を実際に製作するだけでなく、コンピュータによるシミュレーションやプログラミング、データ解析なども行います。


単に電気について知るだけではなく、「原理を理解し、それを使って実際に動く技術をつくる」ことが、大学で電気電子工学を学ぶ大きな特徴です。

電気電子工学ではどんな授業・実習をする?

大学の電気電子工学では、講義で理論を学ぶだけでなく、実際に回路を組み、電気を測定し、プログラムを書き、装置を動かす実験・実習を数多く行います。

電気回路実験

抵抗、コンデンサ、コイルなどを組み合わせて回路を作り、電圧や電流を測定します。
講義で学んだ電気回路の法則が、実際の回路でも成り立つことを確かめます。

電子回路実験

ダイオードやトランジスタなどの電子部品を使って回路を作ります。
信号を増幅する回路などを実際に組み、電子部品がどのように働いているのかを調べます。

デジタル回路実習

「0」と「1」を使って情報を処理するデジタル回路について学びます。
論理回路などを設計し、コンピュータや電子機器が情報を処理する基本的な仕組みを理解します。

電磁気・電波の実験

磁場や電磁波の性質を測定します。
アンテナを使って電波を送受信する実験などを行うこともあります。

モーター・電気機器の実験

モーターや発電機を実際に動かし、電気エネルギーと運動エネルギーがどのように変換されるのかを調べます。

半導体・電子デバイスの実験

半導体やトランジスタなどの電気的な性質を測定します。
電子機器の中心となるデバイスが、どのような原理で働いているのかを実験から理解します。

プログラミング実習

C言語やPythonなどを使ってプログラムを作成します。
計測データの解析、シミュレーション、機器の制御など、電気電子工学でもプログラミングは重要な技術です。

マイコン・組み込みシステム実習

小型コンピュータやマイコンにプログラムを書き込み、センサーやモーターなどを制御します。
「センサーが反応したらモーターを動かす」といった、実際の電子システムを製作することもあります。

制御・ロボット実習

モーターやセンサーなどを組み合わせ、機械を目的どおりに動かす方法を学びます。
ロボットなどを実際に制御する実習につながる場合もあります。

設計・製作実習

自分たちで回路や電子システムを考え、設計 → 製作 → 測定 → 動作確認 → 改良までを経験します。

電気電子工学ではどんな研究が行われている?

電気電子工学では、エネルギー、半導体、通信、ロボット、AIなど、現代社会を支えるさまざまな技術について研究が行われています。

次世代半導体の研究

コンピュータやスマートフォン、電気自動車などに欠かせない半導体について研究します。より高速で消費電力が少ない半導体や、シリコンとは異なる新しい材料を利用した半導体などの開発が進められています。

集積回路・電子回路の研究

多数のトランジスタを小さなチップに組み込み、高度な情報処理を行う回路を研究します。AIなどの計算を効率よく行うための専用回路も研究テーマの一つです。

再生可能エネルギーの研究

太陽光や風力などでつくられた電気を、効率よく利用するための技術を研究します。発電量が変化しても電力を安定して供給する方法や、蓄電池を組み合わせたシステムなども研究されています。

電気自動車の研究

電気自動車に使われるモーター、電力変換装置、バッテリー管理などを研究します。より少ないエネルギーで長く走れる自動車を実現することも重要なテーマです。

次世代通信の研究

より大量の情報を、速く安定して送るための無線通信や光通信を研究します。高速通信だけでなく、多数の機器を同時につなぐ技術や、通信の遅れを小さくする技術なども研究対象です。

センサー・IoTの研究

温度、光、圧力、動きなどを検出する小型センサーについて研究します。センサーと通信技術を組み合わせ、家電、自動車、工場、農業、医療などのさまざまな機器をネットワークにつなぐ研究も行われています。

ロボット・自動制御の研究

センサーから得た情報を使って、ロボットや機械を自動的に動かす技術を研究します。産業用ロボット、ドローン、自動運転などにもつながる研究分野です。

光・フォトニクスの研究

レーザーや光ファイバーなど、光を利用して情報を伝えたり測定したりする技術を研究します。通信、医療、精密計測、センサーなど幅広い分野への応用があります。

パワーエレクトロニクスの研究

電気エネルギーを効率よく変換・制御する技術を研究します。電気自動車、鉄道、エアコン、太陽光発電など、多くの機器で使われている重要な技術です。

医療・ヘルスケア機器の研究

生体から得られる電気信号を測定するセンサーや、診断・治療を支援する電子機器などについて研究します。

電気電子工学は単独で発展するだけでなく、

電気電子工学 × 情報科学 → AI・IoT
電気電子工学 × 機械工学 → ロボット・電気自動車
電気電子工学 × 物理学 → 半導体・量子デバイス
電気電子工学 × 医学 → 医療機器

のように、さまざまな学問と組み合わされています。

電気電子工学とつながる学問

電気電子工学は、電気や電子を利用して新しい技術を生み出すため、物理学・情報科学・機械工学・材料工学など、多くの学問と深くつながっています。

物理学

電気、磁気、光、電子、半導体などの仕組みを理解するための基礎となる学問です。特に電磁気学や量子力学は、電気電子工学と深く関係しています。

数学

電気回路や通信、制御などを数式で表し、システムの動きを予測するために使われます。微分積分、線形代数、確率・統計など幅広い数学が利用されます。

情報科学

コンピュータ、AI、データ処理、IoTなどの分野で電気電子工学とつながります。電子回路という「ハードウェア」と、プログラムという「ソフトウェア」の両方を組み合わせた技術も数多くあります。

機械工学

ロボット、自動車、ドローン、産業機械などでは、機械を動かすモーターやセンサー、制御装置が必要です。機械工学と電気電子工学を組み合わせた「メカトロニクス」という分野もあります。

材料工学

半導体、磁性材料、電池材料など、新しい電子機器をつくるためには材料の研究が欠かせません。材料の性質を変えることで、電子機器の性能が大きく向上することもあります。

化学

電池、燃料電池、半導体材料などの研究で深く関係します。特に次世代バッテリーの開発では、電気電子工学と化学の両方の知識が重要になります。

ロボット工学

ロボットには、モーター、センサー、電子回路、制御、通信などの技術が必要です。そのため、電気電子工学はロボット工学を支える重要な学問の一つです。

エネルギー工学

発電、送電、蓄電、省エネルギーなどの研究でつながります。太陽光発電や風力発電を社会で安定して利用するためにも、電気電子工学の技術が使われています。

医学・医用工学

心電図などの生体信号を測定する装置や、さまざまな医療機器には、センサー、電子回路、信号処理などの技術が使われています。

たとえば「自動運転車」を研究する場合には、電気電子工学 × 機械工学 × 情報科学・AI × 制御工学といった複数の学問が関係します。
また「次世代半導体」を開発する場合には、電気電子工学 × 物理学 × 材料工学 × 化学といった組み合わせが重要になります。
電気電子工学は、電気・電子を中心として、エネルギー、情報、機械、材料などを結びつけ、実際の技術へと発展させていく学問です。

電気電子工学からつながる職業

電気電子工学で身につける、電気・電子回路、半導体、通信、制御、プログラミングなどの知識は、さまざまな産業や技術分野の仕事につながっています。

電気エンジニア

発電・送電設備や工場、ビルなどの電気設備について、設計・開発・保守などを行います。社会へ安定して電気を届けるための重要な仕事です。

電子回路設計エンジニア

家電、自動車、通信機器、医療機器などに組み込まれる電子回路を設計します。製品に必要な機能を実現するため、さまざまな電子部品を組み合わせます。

半導体エンジニア

スマートフォン、コンピュータ、自動車などに使われる半導体の設計・製造・研究開発に携わります。より高速で省電力な半導体をつくる仕事などがあります。

通信エンジニア

携帯電話、インターネット、無線通信、光通信などの通信システムを設計・開発します。大量の情報を高速かつ安定して届ける技術を支えます。

制御エンジニア

機械や設備を自動的に動かす制御システムを開発します。工場の生産設備、ロボット、自動車、ドローンなど幅広い分野で活躍します。

ロボットエンジニア

モーター、センサー、電子回路、制御技術などを組み合わせてロボットを開発します。機械工学や情報科学などの知識も活用する仕事です。

自動車・EV関連エンジニア

電気自動車のモーター、インバーター、センサー、電子制御システムなどの研究・開発に携わります。自動車の電動化によって電気電子技術の重要性が高まっている分野です。

電力・エネルギー関連エンジニア

発電、送電、蓄電、太陽光発電、風力発電などの設備やシステムに携わります。エネルギーを効率よく安定して利用するための技術を支えます。

医療機器エンジニア

診断装置、生体情報を測定するセンサー、治療機器などの研究・開発に携わります。電気電子工学と医学の知識を組み合わせる仕事です。

組み込み・IoTエンジニア

家電、自動車、産業機械などに組み込まれる小型コンピュータや制御システムを開発します。センサーや通信機能を利用したIoT機器の開発にも関わります。

研究者・大学教員

大学や研究機関などで、半導体、通信、電力、電子デバイス、光技術などについて研究します。新しい技術の基礎をつくる仕事です。

電気電子工学を学んだ人の進路は、いわゆる「電気関係」の仕事だけではありません。
半導体・通信・自動車・ロボット・エネルギー・医療機器・ITなど、現代社会を支える幅広い産業につながっています。
特に、「電気をつくる・送る」「電子回路で情報を処理する」「センサーで情報を取得する」「機械を自動で制御する」といった技術を組み合わせられることが、電気電子工学を学ぶ大きな強みです。